突然ですが、「かわいい」という言葉を使わないようにしようと思います。
なるべく。
実は前にも「かわいい禁止令」を自らに課していたのですが、
それを解禁してからというもの、あまりの便利さに負けていました。
だって、「かわいい」と言っておけば済んでしまうことが多すぎるんですもの。
でも、チェスキー・クルムロフという、
あまりに「かわいい」街に行ってみて思ったんです。
やっぱりこの言葉は使い勝手がよすぎる、と。
この街にあるものは、何でもかんでも「かわいい」んですよね。
だからAを見ても、Bを見ても、Cを見ても、感想は「かわいい」。
「かわいい」と言えば言うほど、魅力の正体がぼんやりしてきて、
「面白味を感じるツボ」や、「製作者の意図」など、
「かわいい」の裏側に潜むものが見えなくなっていくな、と。
別にそうなっても困ることは何もないのですが、
文章に携わる仕事を好きでやっている僕にとって、
それは料理人が煙草を吸うのと同じぐらい、
自分の感覚を鈍らせてしまう自殺行為なのではないかと。
そんなこといったって、他の形容詞だって同じじゃないかと言われれば、
「まあ、同じですよね」と答えるしかないのですが、
「かわいい」は対象物を選ばない万能選手であるが故に、
いっそう危機感が強いのかもしれません。
はらだいち
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