世界一周ブログ -  “スシ” in パリ

muko
  • “スシ” in パリ

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    「パリでは日本食、特に寿司が流行っている」

     

    それは紛れもない事実なのだが、
    僕らがパリで会ったスシは、寿司ではなく、“寿志”。
    アクセントも少し異なり、“シ”ではなく“ス”が強く発音される。

     

    ほとんどの人にとってみれば「何のこっちゃ」だろうが、
    高校時代の友人諸君ならピンとくるハズ。

     

    そう。

     

    スシはスシでも、サッカー部顧問の小倉寿志(ひさし)先生。
    先生の家族旅行に「合流」させてもらって、お食事をご一緒したのだ。

    ちなみに、「スシ」という親しみを込めた(←ココ重要!)あだ名は
    本人の前では恐ろしくて絶対に使えないので、
    この話題を今回のブログの枕にしてしまったことを、
    早くもちょっと後悔している。

     

     

    (あ、ちなみに今回のブログは多分長くなると思います。)

    小学校からサッカーをやっていた僕は、
    中学に上がると何の迷いもなくサッカー部に入った。

    2年生になって3年生が夏に引退してからは部長となり、
    練習メニューの作成から、遠征時の段取りなど、
    ありとあらゆる雑務をこなしていた。

    中学時代のサッカー部の顧問はすぐに暴力を振るう人で、殴られてばかりいた。
    遠くに僕は部長だったから、部員にミスがあれば
    「管理不行き届き」という名目で鉄拳制裁された。

    体罰が完全悪だとは思わない。
    ガキは殴られなきゃ分からないこともある。
    でも、彼の暴力は違った。
    人望もなく、実力もないため、
    暴力でしか人をコントロールできなかったのだ。
    それは当時から何となくわかっていた。

     

     

    それでもサッカーは好きだった。

    だけど、中学でサッカーはおしまいにするつもりだった。

    別に暴力教師のせいでサッカーに嫌気が差したワケではない。
    理由は中学3年生の後期から、にわかに「モテ」始めたことにある。
    高校に入って汗臭いサッカーを続けるよりも、
    ちょっとクールなニオイのする“バンド活動”をした方が
    手に入れかけている「モテ」を加速させることができるような気がしたのだ。

    中3の夏までスポーツ刈りだった髪の毛は、
    冬が終わるころにはサラサラの中分けヘアーになっていた。

     

     

    そして高校入学を控えた春休みのある日、
    「入学式から茶髪なら、地毛と認めてもらえるのでは!?」という
    妙案を思いつき、自分で髪の毛をほんのり茶色に染めた。

     

     

    高校の入学式。
    自分で言うのも何だが、それなりに狙いは的中した。
    他のクラスから女子が覗きにくるぐらいのモテっぷりだった。
    ちなみに今のヨメは、高校1年生の時の同級生。
    彼女は僕のことを「入学式の体育館で目をつけた」と言っていたから、
    幸か不幸か、この作戦で将来のヨメをも獲得したことになる。

    昔の俺、グッジョブ。

    家に帰ると親戚のお兄ちゃんから借りた(まだ返してない)
    エレキギターの練習に精を出す毎日。
    しかし、どうにもサッカー部が気になっていたのは事実だった。
    「一度だけ」と、仮入部期間中にサッカー部の練習を覗かせてもらった際、
    そこにいた1学年上のマネージャーにひと目ぼれし、
    あっさりとサッカー部に入ることを決意した。
    マネージャーに対する甘い気持ちで入部したものの、
    サッカーはやっぱり甘くなかった。

    ただ、中学時代とは何もかもが違っていた。
    違いを生み出していたのは、「スシ」と呼ばれている
    顧問の先生であることはすぐにわかった。

     

     

    我が相模大野高校サッカー部は、当時それなりに強く、
    僕らの一つ上の代では、神奈川県でベスト16まで行った。
    神奈川県は学校数が多いだけにレベルも高くて
    当時の神奈川県代表(中村俊輔率いる桐光学園)は、
    全国大会で優勝を果たしている。

     

     

    先生の課す練習は僕が考えていた中学時代のそれに比べたら、
    (当然ながら)質、量ともに雲泥の差があった。

    その分楽しかったが、まあ、とにかく走った。

    あれから16年間生きてきて、いろいろとキツイこともあったが、
    1年の夏の練習以上の“強敵”には今のところ出会っていない。

     

    そういえば、先生の言葉の中で、僕が大切にしていることがある。
    それは、「キツイとツライは大きく違う」ということだ。
    何か壁にぶつかった時、「キツイ」ことは誰にでもあるが、
    それを「ツライ」と感じてしまうようなら止めちまえ、ということだ。
    「キツイ」は体力的な問題だが、「ツライ」は気持ちの問題。
    気持ちで負けたら、目の前の壁を越えることはできない。

     

     

     

     

    パリのビストロで先生との食事を終えてホテルに帰る途中、
    僕にとって、先生とはどんな存在なのだろうと考えた。
    そこからふた晩ぐらい(ホントに!)考えた結果、
    「定点観測」という言葉が不意に浮かんできた。

     

     

     

     

    高校時代の同級生とは今でも仲良くしているが、
    彼らは僕と同じように年を取っているから、変化に気づきにくい。
    言わば不定点観測。
    毎日会っている人には、太ったことが気づかれにくいのと同じだ。

     

     

    でも先生は、僕と同じだけ年を重ねてはいるものの、
    頭の中にある“高校生の僕”という目を通して“今の僕”を見る。
    言わば定点観測。
    久しぶりに会った人には「太ったね」と指摘されやすいのと同じだ。

     

     

    先生と会っている時、僕は先生の目の奥にいる「高校生の自分」を通して、
    当時の記憶を呼び覚ます。
    冒頭の部分で述べたような記憶は、今回パリで蘇った高校時代の断片だ。

    あれから倍ぐらいの月日を過ごしているが、
    高校生の自分は、なかなかいいモンを持っている。
    モテようと必死だったことだって決して悪くない。
    結婚した今でもそれぐらい自分を磨こうとする努力はすべきかもしれない。

     

     

     

     

    「何か、こうして会っててもパリって気がしねえな」と先生は言っていた。
    先生は54年間の人生の中で、初の海外旅行だったらしい。

    「二人のブログを毎日見てたら『海外もいいな』と思うようになったんだ」と
    奥様と娘さんを連れて海外旅行に行くことを決心した理由を教えてくれた。

    どうやら、このブログを通して、
    今まで影響を「受けてきた」人に、影響を「与える」ことができたらしい。

     

     

     

    また一つ、大人になった気がした。

     

    「大人になった」とか言いつつ、ハイネケン博物館@オランダではこの有様。先生、ご馳走さまでした! 今度こそ年末に遊びに行きますから!!

     

     

     

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