世界一周初心者のヨメブログです
砂漠の真ん中まで運んでくれたラクダ。帰りは乗ってあげることができなかったけれど。。
憧れのサハラ砂漠へ行ってきました。
それはそれはきれいな景色でした。
が、それは突然やってきました。
ラクダに乗って砂漠で1泊するツアーに参加。
ツアーといっても現地のファミリーがやっているもので
砂漠の中で現地料理をいただいて、星空の下寝て、朝日を見て帰ってくるという
シンプルな内容で、この日の参加者は私たち夫婦のみ。
砂丘に強い風が吹いて、砂嵐がやってきて映画「ハムナプトラ」みたいに
何かのカタチになりそうに砂がブワッと舞い上がる。
ラクダをひいてくれてる少年は、ターバンをゆるめて顔にも巻きつける。
夕日は雲で見れなかったけれど、あたりがだんだんと闇に包まれて
一番星が光りだす。
まわりは風の音だけ。
…そんな中、テントへ戻ろうと静まり返った夜の砂漠を歩いていると
突然左足の小指に衝撃が走り、衝撃のあまりそのままうしろに飛び跳ねてしりもちをついた。
痛いッッッ!!!
太い棘でも刺さったかと思い、ムコに見てもらうも、
なんともなってないそう。
そんなバカな、、こんなにも痛いもの!!!
おなかの調子がいまいちだったムコは胃薬を飲みながらモゴモゴと
「棘がないんだから抜きようもないもの。アリじゃない?」と言う。
足の小指の側面で自分じゃよく見えないけど、たしかに傷口すらなさそう。
でも痛みは増してくるので、別のテントにいるツアー引率のおじさんに診てもらうことに。
「何かに刺された」とだけ伝えるとアラビア語とフランス語とほんの単語程度の英語を話す
おじさんは砂の上に絵を描いてくれた。
えーと、サソリだと思う、と。
そして、ガラガラヘビだとデンジャーだ、と。言ってる気がする。
こんな絵を描いてくれた 絵で会話
痛いのは足首だけならサソリだ、もし痛みが膝くらいまできたならヘビかもしれないそうだ。
時間は夜の22:00すぎ、真っ暗の砂漠の真ん中。なんにもない。
星空の下、おじさんはテキパキと椅子を運んで簡易ベットを作り、簡易治療が始まった。
料理用のガスボンベを持ってきてくれて、患部にガスを当てる。
シューッという音とともにガスのにおい、どうやら冷やしてくれてるみたい。
続きまして、コップにガソリンを入れてきてくれて患部にかける。
うーん、ガソリンのにおい、これは何の効果があるのだろう。
そのあと、ビニール袋で足首から下を覆ってくれた。
足首だけが痛いかと何度も聞いてきて、
だったらサソリだから大丈夫だと繰り返しなだめてくれるおじさん。
村に電話するか?と聞いてくれたけれど、あたりは真っ暗だし
大丈夫だというなら寝てしまおう、と判断。
「ここなら星空が見えるから」とサソリに刺されたテント入口から少し離れた
屋外にマットレスを敷いて気分を紛らわせてくれるおじさん。
ありがとう。
夕日に照らされるサハラ砂漠
マットレスに横になるも、ジンジン左足は痛み続けた。
空には満天の星。
流れ星もちらほら。
「どうかサソリに刺されていますように」
ヘビかもしれないという不安がぬぐいきれず、
普段なら絶対に願わないことを唱えていた。
火の中に足を突っ込んでいるような痛みが襲う。
今までに経験したことがない痛みだ。
まさに“毒”が内側から回っている痛みという感じ。
見えるものが星空しかないので、すがる思いで願掛けを始めてみる。
空にはサソリ座がキレイに輝いている。
「あのサソリ座が見えるうちはきっとサソリに刺されてる、大丈夫」
ちょっと雲が出てきてサソリ座が見えなくなると絶望的な気分になった。
ヘビ使い座がどれか分からないので、どれもがヘビ座に見えてくる。
なんて単純な形なんだ、ヘビって。
一睡もできないまま5時間が過ぎ、夜中の3時になった。
黙っていられない痛みになり、時折「うーうー」うめく。
ついには1分間に1度くらいの間隔で痙攣がやってきた。
痛さのあまりの痙攣なのか、毒からくる痙攣なのか。
おじさんは膝までしびれがきたらヘビかもしれないと言った。
今、しびれはふくらはぎを伝っている、気がする。
でも、これはしびれじゃなくて痛さからくる感覚の間違い、なのかも。
なんだか、もうよく分からない。
頑固だった祖父の遺伝か、我慢を美徳とするところがある私。
昔から具合が悪くて保健室へ行くのは苦手だったし、
体育を休むのも苦手だったし、貧血になってもしゃがみこむ勇気がなかった。
こんな真夜中の砂漠でみんなを叩き起こす勇気もない。
「あと30分我慢してみよう」と心に決め、サソリ座とのにらめっこを続けた。
30分後、状況は一向に良くならなかった。
むしろサソリ座は見えなくなっていた。
大ごとになってしまうけれどおじさんを起こそう、と決め、
隣で寝ているムコを起こした。
「私、ヘビにやられたと思う。サソリじゃないと思う。
ケーブルテレビのアニマルプラネットでガラガラヘビが出す音の特集やってたんだけど、
さっきおんなじ音を聞いた気がする。このままだと死んじゃうかもしれない」
起き抜けに妻からの死んじゃうかもしれない宣言を聞いたムコは冷静だった。
「そうか、今はまだ真っ暗だから明るくなるまでちょっと我慢しよう」
我慢はしたんだけど、ダメだったから起こしたのだ。痛いのだ。
ということをくどくどしばらく訴え続けたら
ムコが「じゃあおじさん起こすか?」と言った。
そう言われると、、、そうなんだけど、、、起こしてほしいんだけど、、、
大ごとにする勇気が一気にしぼんだ。
ムコは私の手を握ってくれた。
そして、3分後にはいびきをかき始め
5分後には暑くなったようで手をひっこめて
寝返りを打ちながら布団の隅のほうへ転がっていった。
“サハラ砂漠でガラガラヘビに噛まれて邦人女性死亡”そんなYahoo!タイトルが
頭を何度もよぎった。
これじゃ、しぶしぶ送り出してくれた家族にも申し訳ない。
そして何より自ら危険な場所に行っておきながら
ガラガラヘビに噛まれたんじゃ、なんともかっこ悪い。
朦朧としながら、とんねるずの軽快な曲が頭から離れなかった。
空が白み始めた。
おじさんのテントのほうで朝食の準備の音がする。
時間は朝5:00。やった、朝がやってきた!
あと1時間もすれば日が昇る。
本当はラクダに乗って朝日を見たかった。
でも左足のしびれは太ももまできていたし、
立つことすらできなくなっていたので
車を呼んでもらうようにムコに頼んだ。
こんなにもしびれて痛いのに見た目は右足となんら変わらない。
ちっとも赤くないし、腫れてすらいない。
ちゃんと症状と比例して見た目も痛そうになってもらいたい。
そうじゃないと大ごとにしづらいはないか。
一見なんともなさそうな足ながら
おじさんとムコに抱えられて迎えの車で近くの村まで移動。
運転をしてくれた別のおじさんが朝6:00ながら村のドクターを
起こしてくれて、ホテルで寝ている私を問診。
「スコーピオン、ノープロブレム」という診断を受け、
血清を左足の小指に注射してくれた。
足の小指に長い針なんてむちゃくちゃ痛そうだけど、
サソリの毒によりすでに麻痺してるので全然痛くなかった。
運転してくれたおじちゃん曰く「これで2時間で痛みはなくなるよ」とのこと。
でも打ったのは血清で痛み止めではないので、
その後もうめく痛みは夜まで続くのだった。
アラビア語とフランス語とちょっとの英語での会話でここまで対処してきたけれど
不安が払拭できないので、車で10分の別の村にある日本人が経営している宿へ移動。
痛いと騒ぎ立てる私を見かねて、ムコが熱心に日本人宿を調べて
砂漠地帯の公衆電話から移動の手はずを整えてくれました。
日本人宿であれこれ話したところによると
観光客で刺された人はめったにいなくて、これで2人目だそう。
日本人ではもちろん初めて。
原因がわかって、注射もしたし、いつまで我慢すればいいのかのめども立ったので
一気に気が楽になった。
宿の陽気なモロッコ人従業員は「僕はずっと住んでるけどさされたことなんかないよ」だそう。
運なのね。
刺されただけで姿は見ていない私。
どうせならその姿、写真1枚くらい撮らせてほしかった。
刺されてから40時間、いまだに感覚の戻らない左足の小指です。
今ならたんすの角に小指をぶつけても大丈夫(^^)v
行きはよいよい 絶好調のムコ
*旅メモ* あんまり役に立たないかもしれないけど(^^ゞ
◎サソリに刺された場合
神経毒なので痛み、しびれがリンパの流れに沿って広がり、
24時間続く。痛みは蜂に刺された数十倍とも言われる。
サハラ砂漠のサラサラの赤砂にいるサソリは命に別状はない。
黒い地にいる黒いサソリは大変危険。
ただし、アナフラキー症候群を持っている人はショック死の可能性もある。
また、子供やご老人はすぐに病院に行く必要がある。
モロッコの観光客が行くメルズーガの砂漠で刺された場合、
メルズーガに血清を持っているドクターがいるので診てもらうとよい。
(私は無料で診てくれたので値段は不明)
刺されても腫れも赤みも、傷跡もなく、見た目は変わらなかった。
痛みどめにバファリン、ロキソニンを飲んだけれど痛みが治まった実感はなく
効果があったかは不明…。
氷水で冷やすとしびれは変化ないが痛みはやわらぐ。
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